弓で演奏するギターArco Guitarのページです。

Arco Guitarはどうなった 2020年5月

このまま朽ち果てるのか


Arco Guitarに関心をお持ちいただいた方が共通してお持ちになっているであろう、この「どうなった?」への回答は若干の言い訳がましい複合的なものとなります。
当初マグネットPUでの集音、パッシブ回路で出来るだけ厚みのある音色を目指したわけでしたが、マグネットPUはその原理上、擦弦による弦振動を拾うのには必ずしも適さない、事が分かりました。PUそのものの問題というよりは正確には、擦弦での発音の際の弦の振幅が特に芯線の細い0.024”程度の巻き線では振幅の幅が小さくなる為、極めて集音が難しく、この為各減の音量のバランスが著しく高低が生じ、セッティングが困難、といったん結論付けました。
そこでマグネットPUはあきらめ、一般的に考え付く、ピエゾでの集音を試みますが、信号レベル、音質の初期イコライジングの問題、何よりも鼻をつまんだような独特の音色にしかならず、極めて貧相な音色で、行き詰まりその後打開策が見つからないままとなりました。

こうした「出来ない」事を判明させる事が出来た事だけでも収穫なわけで、
かつて思い描いた頭の中での夢想によるカザルスホールで朗々と響くArco Guitarの雄姿、は今や覚醒によって打ち消されました。そしてこの事は極めて重要な過程であったと思います。

従いまして、今後は
①集音の為のPUをある考案中の複数の方法を試みて行く事
②初期イコライジングのシステムを考案設計する事
この2点に主眼を置き、何とかして望む音の楽器に仕上げたいと考えております。

諦めればそこで終わり。
Arco Guitarには多分未来があると思います、自分の存命中に果たせなくてもこれを、ある程度の形にまで持っていって、次の世代に引き継げればいいと思っています。
勿論自分の目でその楽器が弾かれている様子を目撃したいのは本心ですが、先の事は分かりません。ですが残りの人生をこれに注力する意思だけは捨ててはおりません。
必ず皆さんのお手元にお届け出来る様したいと考えております。

PUを使用しない状態ではほぼ問題なく演奏は出来ますし、実際に宅録で何曲か実際に使用はしています。

ギタール


エレクトリックシタールという楽器は60年代のサイケデリック、インドブームからの派生で60年代にCoralが製作したものが最も古典です。また同時にそれしか無かったのが歴史です。需要もそれほど大きくはないでしょう。
それでもエレクトリックシタールに関心を持つ人はいつの時代も必ずいて、現在でもStars,Jerry JonesなどのCoralのリイシュー盤は市場に存在します。
ストラトやテレキャス型のが欲しいなあ、と昔から考えていて製作したのがこちらです。


この楽器に使っているブリッジも単品での販売を計画しています。

ギタールブリッジ


以下は2015年以前の記事ですが、
Arco Guitarに取り組んだ自分なりの足跡として残そうと思います。
内容は現状実態とややずれたものも含んでおります。
記事の無断転載は決してなさらないようお願いします。
もし、ご興味あってのリンク等ご希望される方は、
メールからご一報くださいますようお願いします。

Arco Guitarのデモ演奏

2015/12/22
Arco Guitarのデモ演奏、「もろびとこぞりて」4重奏です。
鐘の音は、Musescore2による自動演奏を重ねてあります。

マグネットPUに問題が見つかったため、ピエゾ+プリアンプへと設計を変更中です。
この録音ではピエゾのプリアンプは小型のミキサーで代用しています。

Arco Guitarのデモ演奏

2015/03/27
Arco Guitarのデモ演奏です。以前にアップしていたものより
幾分音に厚みが出ました。
ピックアップを作り直し、ターン数をトータル2000ターン増やしました。
音質にはまだまだ改良の余地あるものの、基本的なレイアウトはほぼ完成と言えるでしょう。
極力プリアンプに頼らず、ミキサー直、アンプ直、どちらでも使える事を想定しています。
勿論グライコはあるにこした事は無いですが、音質は右手のコントロールが9割以上の
比重を占めています。

MTRで録音
アルペジオ伴奏はES-335
ArcoGuitar 主旋律(中央)
右ch オクターブ下メロディ
左ch ハモリ

Arco Guitarのきよしこの夜

2014年11月30日

Arco Guitarできよしこの夜を弾いてみました。
ガットギターで伴奏
エレキはハーモニクスでベル風の音。
Arco Guitarは中央やや左主旋律
やや右 ハモリです。

言い訳がましいのですが今年は右肩右腕の不調で、実に大きな支障をきたしました。
Arco Guitarの普及という目標を大きく遅れている訳ですが、今の段階で身体に留意すべきと再認識できたことは、逆に収穫と捉える事にしたいと思います。

Arco Guitarを知る方はまだほんの少しです。
しかし、私一人ではなくなりました。
来年の今頃、もっと沢山の方に知ってもらい、
一台でも多くの個体を世に出す事が私の使命となると思います。
もっと広告を、という声も、ありがたく受け止めていますが、まだいくつか解決しなければいけない課題も残っています。
新しい楽器を生んだ、先人たちもこうしたいくつもの壁を超えるための、治具や工法の工夫に多くの時間を費やしたのでしょう。

以前イタリアクレモナでストラドの使っていた道具、を見る機会がありました。
300年前の道具、さぞかし粗末かと思いや、現代の物と基本的には変わらないものも多く、あの時代のイタリアの技術の高さに、脱帽しました。
手がどれだけ器用でも、指で木は削れません。
道具、工法、時間の配分、それは生活の全てに関わることで、
自分一人で親方と、弟子を両方やる必要があります。

来年は今年の遅れを取り返すよう、頑張りたいと思います。


弓で弾くArco Guitarが誕生しました

この楽器を使って新しい「音楽」を創ってほしい

完全受注製作・発売準備中

2013年11月30日発表
弓で弾くアルコギターをご紹介します。「アルコ」はイタリア語の弓、虹などの意味。
この楽器はアルペッジョーネ、ビオラダガンバを連想させますが、それらを目指してはいません。美しい古楽器達はポピュラー音楽の現場では立ち位置を確保するのが難しい。比較的狭い高尚な世界での存在です。

アルコギターはバンドの中で演奏する為に、エレクトリック化を最初から基本的な設計にしました。
練習スタジオにあるJC120やMarshallJCM、ツインリバーブで良いパフォーマンスを得たいと考えました。
それにはマグネットのハイインピーダンスのピックアップが必要になります。

箱ものに見えますが生音は極力抑えて、尚且つソリッドでもセミアコでもフルアコでもない構造を考えました。フィードバックを抑えるためにはソリッドにするのが効果的ですが楽器の軽量化のためにこの特殊な構造にしたのです。ネックの角度は極力浅く、ローポジションではコードが押さえられてアルペジオが容易、ポピュラー音楽に親しむギタリスト達にこの楽器に挑んで欲しいと考えました。
調弦は普通のギターと同じ。弦はダダリオ010~046(平巻)を使用。
搭載予定ピックアップ(製作中)は普通のハムバッカとほぼ同じ構造です。
弦長は635mmで若干短いものの、普通のギターのスケールです。
フレットは普通のニッケル、24フレットまで使えます。
弓はチェロ用の弓が適していると考えていますが、これは奏者によって工夫をして頂く事になるでしょう。
音楽ジャンルは全く限定無し。
演奏方法が確立されていない楽器をあなたは手にすることになります。
チェロのような演奏姿勢になりますが、
これは将来この楽器のユーザーが切り開いてくれるものと信じています。

製作途中の動画、ネックの仕込み途中の様子

なぜArco Guitarを作ろうと思ったか

新しい楽器が新しい奏法と音楽を生む


奏法が新しい楽器を生むのかもしれませんが、この思索はニワトリとひよこ、どちらが先?な話になってしまいます。
現代のバイオリンやチェロもストラディバリの時代には革命的な新しい楽器だったことでしょう。アルペッジョーネはシューベルトの時代に存在したらしいですが、普及せずに衰退した楽器のようです。アルペッジョーネソナタ、という佳曲を残している訳ですから、それなりの個体が弾かれていたと想像できます。
アルコギターは発想に於いて決して新しい楽器とは言えないものです。ギターを弓で弾くアイデアは既にアルペッジョーネが成し得ている訳だし、復刻の楽器も製作する方もいらっしゃるし、世界には奏者も既に存在しています。

では、私のような凡人にこの上何が残されているのでしょうか?
弓奏出来るギターをエレクトリックで製作する事、を発想したのは10数年も前の事です。
それが遂に形になりやっと、第一歩を踏み出せます。

なぜ古典的な楽器に取り組まず、しかもエレキなのか?


20世紀のエレキギターと周辺機器の発展は、音楽の創出に貢献少ないものではなかったと思います。20世紀後半の音楽にエレキギターは欠かせない存在です。
増幅回路に於ける半導体、IC、デジタルプロセッサの進歩、は音響、音色の多彩さに無限ともいえる可能性をもたらしました。
そしてそれらは20世紀後半から現在に至るまで、音楽産業の中で進化を続けています。
レスポールをボーイングしたジミーペイジ以降、特に目立ったアイデアの出て来ないのは何かそれを阻害する理由があるに違いない。
弓奏楽器のエレクトリック化は既に幾つかのメーカーが商品化していて、普及を見ています。弓奏するギターも発表された方がいる事も認識しています。V字型のフレット付きバイオリンや、プリアンプの内蔵されたエレキバイオリン、チェロなどが生み出されてきました。
弓奏にはネックの角度や駒の高さ、形状、など解決しなければいけない課題が多すぎて、取り組む人がいなかった、と言う事なのでしょう。


既にこの楽器の持つ問題は幾つか明らかになってきています。
それらを改良によって可能な限り解決し、完成に近づけていく事を自分の残りの人生の課題とする事に決めました。
そして、商品化、事業家への道を何とか開拓したいと考えています。

この楽器をお試しになりたい方はお問い合わせ下さい。
試作品を貸出し出来ます。






Arco Guitarのこれから

ピックアップ製作中

一応の完成を見たもののアルコギターはこれからの楽器です。
悲観的に考えればアルペッジョーネより更に薄命かもしれません。楽観出来るとすればどれだけの普及を望めるのか、という点に尽きますが、存命中にこの楽器で超絶技巧を聴かせてくれる奏者が現れるのかどうか?
弓奏のバイオリンやチェロが5度調弦であるのに対して、4度(2,3弦間は3度)の調弦です。普通のギターの調弦が和音を押さえるのに合理的な調弦ではあるものの、単旋律の演奏に5度調弦が優勢であるという説もあります。
こうした検証は、いずれにしても叩き台となるこの試作のアルコギターを元に行っていく事になります。
アルコギターに限らず、一台の楽器が全てを叶える夢の楽器である訳はなく、全ては有形であるが故の制限との格闘、挑戦であり続けるでしょう。
指板の形状、ピックアップ及び各パーツ、製作治具の改良、専用弦の開発すら必要になって行くかもしれません。
一人で出来る事には限界があり、このアルコギターを量産=事業として取り上げてくれる企業、組織を探して行きたいと考えています。

これからこのページに於きまして、随時この楽器について考えて行きたいと思っています。この記事にお目通し頂きます楽器製作緒先輩方のご鞭撻を期待申し上げています。

一人でも多くの奏者がこの楽器で新しい音楽世界を創造してほしい。
次世代の音楽文化へ新たなジャンルを築き、残したい。
音楽は宇宙の治癒の力であると信じます。

2013年11月30日  幸子の誕生日に
Musicaweno 上野眞文